100円レンタルしていた「ミス・シェパードをお手本に」の期限が近付いていたので、インナーマッスルを鍛えるためにお腹をポコポコさせながら視聴。それにしても、登場人物の誰もミス・シェパードを人生のお手本にしているわけではないのに――どちらかというと反面教師――なぜこういう邦題になるのか理解に苦しみますが、私はこの手の作品を大好物としておりますので、内容に関しては徹頭徹尾楽しめました。それにしても意外にレビューの評価が低くて辛い。皆人生に対する悩みのない超絶ハッピー四歳児とかなの?
マギー・スミス演じるマリア・シェパード(註・偽名)は、映画冒頭で起きる交通事故でパニックになって逃亡し、一時は精神科病棟に措置入院させられるほど精神状態が悪化するが、治療を拒み、脱走してバンをねぐらに路上での無軌道な生活を始める。元修道女見習いで、ピアノの才があり、フランス留学なども経験していながら、事故に対する罪悪感からすべてを投げ捨て、プライド高く「私は清潔」と言い張りながらも、洗濯も入浴もせず、悪臭にまみれてゴミの中で生活をし、周辺の住民から煙たがられたり、見下されたり、あるいは深く憂慮されたりしながら生きている。
人生において何よりも大切なものを放棄したがゆえに生じる苦悩が描かれているが、基本的にコメディなので深刻な仕上がりではない。認知症の進む母に振り回されるとともに、自分の人生にも秘密を抱え、空想上の分身と生活しつつ、ミス・シェパードを見守り続ける劇作家のアランを軸に物語は進む。最後の瞬間を迎える前に福祉施設で入浴をし、ピアノに向かい、涙ながらに弾くミス・シェパードの姿には心打たれる。老いと秘密、生きがいや仕事について真剣に考えたことがない人は、さほど心を動かされないかも。
主演のマギー・スミスは、言わずと知れたハリポタシリーズのマクゴナガル先生。小遣い稼ぎとしてミス・シェパードを定期的に恐喝する元警官を演じるのはジム・ブロードベンドで、こちらはハリポタで椅子に変身していたおじさん先生。ハグリットの好い人こと、マダム・マクシーム役のフランシス・デ・ラ・トゥーアも出演。ジェームズ・コーデンが1シーンだけ出てくるんですが、カメオ出演なんでしょうか。