お盆を舐めすぎた

 実家に対する帰属意識が希薄で、一人暮らしをしていた時に「盆正月くらいは帰らんば―」と毎年言われてそのたびに「嫌」と言い張り続けたあの頃、生きるのが辛かった、行ったり来たりすれ違い、あなたと私の恋――だったりしたわけですので、どうも盆と正月に人々が大移動するという実感がわかない。もちろん何度かそれらの時期に帰省したことはありますし、新幹線が満席パンパンドンパンパンで閉口した経験もあるとはいえ、「身内が病気とか高齢なら別として、そんな家に帰りたがる人いる?」と今でも斜に構えて受け止めています。

 そのせいで今日買い物に出て閉口することになったんだわ。昨日も割と車が多かったので、まあ同じくらいかなと高をくくっていたら、今日は輪を掛けて交通量が増えとる。コスモスも多けりゃエレナもやたらと客が多い。しかも普段は見たことのない顔がずらり。まあ、亡くなった大叔母が好きで晩年によく食べていた薄皮白あんパンは無事売れ残っていてお供え出来たから良かったものの、ファミリー向け寿司パックとかは面白いように売れていました。でもお立合い、エレナの寿司はわさび別だからね。しかも持ち帰りはセルフだからね。うちは柚子胡椒派なので取り損ねても何の問題もないですが。

 そういえば、なんかなし崩しのうちに、お盆どころかお通夜とかでも寿司やら肉やら刺身やらが出るようになっていませんか? 伝統を重んじるとうそぶいて少数者を糾弾するガチガチの保守派は、今こそ出しゃばってお盆の生臭物排除のために立ち上がり、心の底から動物性たんぱくを愛する民衆に嫌われんといかんと思うよ。国賊の私は無視して食べるけど。

※ちなみにうちのあたりの浄土宗は、お盆の三日間は食事内容もお供え物も決められています。とんだ人権侵害だと思う――嘘。思わないけどそういうことにしておく――ため、私は別におかずを作って食べることが多かったです。お供えはまあそのままのご家庭も多いでしょうけど、食事まで厳密に守っている人ってどれだけいるのかなあ。祖母達は頑なに守っていましたね。子ども心に「ついていけんわ」と呆れた想い出。まあヘルシーなのは確かだから今年はそのまま食べるかも。

※以前「将来の墓はどがんする」と父が訊いてきた時、正直に「墓じまいして自分の遺骨は海にまいてもらう」と答えたらブチ切れられました。理不尽。