時代よのう

 大正8年刊 桂六十郎著「夫人の内職」にて、佐賀錦が内職の筆頭として紹介されています。着眼すべきは「希望する人は相良好子刀自に教えてもらえる」という表記。

桂六十郎 著『婦人の内職』,興産発行所,大正8. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/906919 (参照 2024-06-05)

 P24でさりげなく西陣織がディスられているのが私のツボ。別ページではご丁寧に当時の相良刀自の住所までばばんと記載されています。個人情報という概念のない時代の恐ろしさをひしひしと感じた次第。この本の情報がどれだけ正確かわかりませんが、相良刀自は(多分数えの)15歳で佐賀錦を学んだあと、東京に出てから西洋の織物に取り組まれたとのこと。それで模様織(平織りの色替え)を開発することになるのか。思わず「要らんことすんな」という心の声が漏れそうになりました。 模様織のせいでいろいろ齟齬が出とんよ、東京の佐賀錦とこちらの鹿島錦の間に。もう永遠に相容れない気がします。そもそも相容れなければならないなんてこともないわけですけど。

※相良刀自ご存命の時代でも、東京の佐賀錦のグループは複数あったらしい。第十回商品改良会・婦人手工芸品展覧会に二等で入賞したのは早稲田婦人会と錦之友。この時佐賀商工会出品の佐賀錦紙入れは三等でした。ちっ。

商工省貿易局 編『内外商工時報』9(5),内外商工時報発行所,1922-05. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1516980 (参照