ブリなのかスナメリなのか

 スナメリという海棲哺乳類の存在を知ったのはしばらく前な上、生粋の太良町民でありながら海中鳥居なるものがあることすらわきまえない子ども時代を過ごしてきたわけですよ、私は。どんだけ無知やねんと説教されても仕方ない。まあ、鳥居に関しては、ちょうど建て替える時期――栄町区民ではないので正確な時期は不明――にこっちにいなかったという事情は斟酌してほしい。朽ちきった上塗料がはがれて古びた姿を遠目に見ることしかなく、しかも目が悪いので、てっきりビッグサイズの杭だと思いこんでおりました。嗚呼。

 踊ると誰かが怪我をするという恐怖の鎌踊りを川原地区婦人会がやらなくなり廃れてしまった今、せめて大魚神社の伝承だけは伝わり続けてほしいわけですけど、由来があまりいい話じゃないんですよねえ。悪代官が村民から恨みを買って沖ノ島に放逐されたのを、スナメリさんが助けてあげるという。スナメリさん的には善行なんでしょうが、要らん事すんなとも思ってみたり。史実だとしたら村民が報復されていないといいけど。良い子のスナメリさんが島に取り残されて嘆く悪代官を見かねて「困ってる? もしかして今困ってるの?」と小首をかしげてキュートに訊いたに違いない。X情報によると大魚=巨大なブリ説もあるそうですが、町民権限で却下。ヴィジュアル的にどうよ。怖いわ。だいたい人を乗せられるくらいの恵体ブリが沿岸に近づいたら即座に投げ網の餌食になるわな。五十人前くらいの刺身と粗煮になって骨は棄てられてはいおしまいです。

 なお、有明海の沖ノ島に関しては、子どもの頃に親の三夜待のイベントで上陸した経験があります。特例を除き何人たりとも入れない世界遺産の沖ノ島とは違うで。いたるところにやたらと小銭が落ちていましたけれど、「絶対拾ったらダメ」とあらかじめ釘を刺されていたので、参加したお子ら全員で「ぐぎぎぎぎ」と歯を食いしばった想い出。

 鳥居を挟んで沖ノ島と対になる多良岳に登ったのは、五十年の人生で三回か四回。いずれも子どもの時なので、四十年ほど前ですね。

※海の向こうに就職をして、毎日スナメリ通勤してみたい。海のトリトンみたいに生きてみたい。

※なんだこれ可愛い。