訛伝の怖さよ

 あれは私がまだ諌早市内のアパートで独り暮らしをしていた頃ですので、二十代の時だったかな。雑誌を読んでいて面白い記事を見かけました。今となってはネタ的フレーズとなって久しいいわゆる「全米」のお金持ちにアンケートを取り、何かしらの共通要素がないか調べるといったものだったのですが、意外なことに、トイレを自分で掃除すると回答した人が多かったそうで、それが話題になっているという内容でした。その後日本でも有名人が同じことをやっているという話が散見されるようになり、さらには自称風水師の人たち――実際は大正時代にまとめられた園田気学の流派――が喧伝したせいで、トイレ開運法なるちんちくりんなものが成立した、と。すごいよね、この経緯。まあ背景には園田気学なりの理論があったのかもしれませんが、そもそもバスルームの概念自体が違いますしね、アメリカと日本では。念のためにデジコレにもぐって昔の気学や家相の本を調べておりますけど、今のところ、厠の項目で「掃除をすると金運がー」なんて書いてあるのは皆無。

 まあ、掃除に関してはしないよりはした方がいいからとやかく言いたくはありませんが、順番が逆やでい。お金持ちはトイレを自分で掃除する=トイレを自分で掃除すればお金持ちになれるじゃないからね。気温が上がったからコタツを片付けましょう=コタツを片付けたら気温が上がります論なんて通用するわけないでしょう。因果が逆になると成立しないことなんてざらにあるわけで。寒い日にそれやったら同居家族に恨まれます。反省しない人間は猫パンチの餌食となれ。

 つくづく、訛伝って怖いと思います。

※最近さらに怖いなと思ったのが「グルテンは接着剤と同様なので内臓を炎症させる」という説。グルテンフリーはもともと小麦アレルギーの人のための対策だったはず。しょーもないことを真顔で語っちゃいけません。アレルギー反応以外でグルテンが接触により皮膚の炎症を引き起こすなら、生地をこねている段階でパン職人には労災おりるわ。今年だけで一億回くらい聞いた「どんぐりをーたどってもーつーきませんー」というBGMを使った製菓製パン系のショート動画は軒並み嘘になるやないの。謝れ。とりあえずYoutube内のホケミマスター達に謝れ。