幾何学模様は美しい

 鹿島錦や佐賀錦で、複数の糸を使って平織りで模様を出すことを インチキゴブラン 模様織といいますが、鍋島更紗で人間国宝に選定された鈴田センセのお父様が御本で指摘されていたように、果たしてそれが佐賀錦や鹿島錦の個性となりうるのかという点は、常に考えないといけないのではないでしょうか――と、模様織を一切織らない(織れない)自分を間接的に肯定してみたり。見る分には楽しいんですけどね。織るという点に関しては、なぜか食指が動かない。多分私が苦手なスタイルだからだと思います。実は子どもの頃から幾何学模様が好きなんですよ。トライポフォビア(集合体恐怖症)の気持ちは、多分一生わからない。トライポさん達に鹿子とか桝とかを見せたら、恐怖のズンドコに陥ること必至。ヨーロッパでは卍を押し出した図案を見せるのがはばかられるのと同じかも。たまに「違うものなんだから説明すればいいじゃない」なんていう人がいますが、それでことが滞りなく運ぶのなら、誰も困らない。あらかじめ外しておくのが生きる上での配慮ってものでしょう。

 話は変わりますが、ウクライナのイースターエッグがすこぶる綺麗。蝋でカバーしながら何度も染めて、最後に蝋を溶かしてふき取り、仕上げるそうです。いまだ出口の見えないロシアとの戦争で、さまざまな有形文化財が破壊されたと聞き、心が痛みます。