裏を見てみた

 鹿島錦保存会の経紙は1mが基本の長さ。なぜ特注になるのにこのサイズかというと、故大先生=美魔女=暴君ハバネロが「バイアスで取らんでも帯締めば作られる長さでー」と、京都の引箔職人さんにお願いしたから。毎回この長さで織っている人は何ともないのでしょうが、私のように何度も短い経紙――引き箔のそもそもの標準サイズ――で織っている人間からすると、会の経紙はゴールが遠いわけですよ。30cmくらい違いますからね。鹿島錦も佐賀錦も、横のサイズと糸色を同じにした場合、織りの値段は長さに比例します。しかも正比例ではない。極端な話、仮に使う長さが二倍になれば、製品の値段は四倍にも八倍にもなります。なぜなら、同じ図案で安定して織り続けるのが困難な織物なので。

 にもかかわらず、ですよ。私は先日の教室でA先生と約束してしまったのです。

「次は帯にする布を織ります」と。もちろんメンズだから角帯やで。手織りの、本来の意味での鹿島錦の角帯なんて、私はA先生が昔織られた帯くらいしか知らないし、持っているだけで激レアさんになれるのではないかな。余ればお揃いの笛袋を作りたい。手持ちの笛全てに作りたいんですよ、本当は。龍笛さんからPiccoさんに至るまで。

 今立てている本金、編み物に逃避しすぎて何ヵ月目に入ったかすら覚えていないほどですが、台を裏返して確認したところ、奥側の巻き取り用の軸に経紙の端がちょうど乗っかった状態であることが判明。多分半分を過ぎるか過ぎないかというところではないかと。お土産のお守りだの取り外したHDDだので机上がちょっと取っ散らかっておりますが、織るのを優先しているということで。

 桝をベースにした図案の方が縮みづらいし、角度で表情が変化するのできっと仕立てた時に面白いよね。生成りを基本に寒色と中間色で織りたいところ。A先生から頂いた2mの経紙を2回立てるため、もしかしたら合間に、単色で一気に織れそうな別の短い変わり経紙を織るかもしれないし、続けて織るかもしれない。

 余談ですが、最近ゆとりはまっすぐ入れる会に入会しました。鹿島錦保存会の場合、ゆとりは弧を描くように入れるのが基本と教えられるんですが、ガン無視で行きます。台の癖や道具の癖、引っ張り紙の癖、体の癖など、もろもろの要素で決まる織りの仕上がり。私の体と道具の場合は、「ゆとりはまっすぐ&綾で下ろす」のが一番安定するような。これはもう人それぞれなので自分で適切な方法を模索するしかない。