人形――高濱かの子

 紙塑(しそ)や桐塑(とうそ)、胡粉などを使った伝統的な和人形の作り方を、基礎の基礎から解説した本。木目込みにも言及されていて、「こよりを筋の部分に乗せて押さえる」などの未知の小技も。版元はマコー社。伝統美術手工芸シリーズの一冊で、他には手毬やマクラメ、日本刺繍などもある。今回は木目込みの資料として本書を購入したが、同シリーズの和紙工芸も鹿島錦に流用できそう。

 発刊されていた当時と違い、食器より造形物を乾燥するのに向いていると揶揄されるある意味高性能な乾燥機も、頭部や顔を量産できるモールドも、それから型取り用の材料も簡単に通販で入手できる時代になりはしたが、伝統的な材料と技法を解説しているという点だけあげても、この種の手引書の意義は不変ではないかという気がする。

 惜しむらくは、古書としての流通量の少なさ。入手はおそらく困難なので、急いで読みたいなら、国会図書館に複写依頼をする方が早い。なお、現状では、伝統美術手工芸シリーズのうち、「組みひも」と「つまみ画」及び「郷土のてまり」の三冊のみ、送信サービスを利用して自宅端末で閲覧可能。内容をざっと確認してみたところ、いずれも興味深かった。

※私のような立体造形苦手族は、ダイソーとかに打っているデッサン用の人形を流用すれば簡単に体が作れるかも。